洋上風力発電は、海上に設置された風力タービンによって風力を電力に変換する再生可能エネルギーの一種です。日本では、洋上風力発電事業の実施者を選定するために、公募占用制度という入札制度が導入されています。この記事では、公募占用制度の概要と、2021年の第1ラウンド公募の結果を受けて行われた見直しについて解説します。
公募占用制度とは
公募占用制度とは、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に促進区域として指定された海域を、最も適切な事業者に占用させるための制度です。この制度は、2019年4月に施行された「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(再エネ海域利用法)に基づいています。
公募占用制度では、事業者は供給価格(売電価格)と事業実現性(事業計画や技術力など)の2つの要素で評価されます。供給価格は120点満点で、最も低い価格を提案した者が満点となります。事業実現性は120点満点で、各区域に定められた公募占用指針に基づいて評価されます。供給価格と事業実現性の合計点数が最も高い者が入札者として選定されます。
選定された入札者は、国土交通大臣から占用許可を受けて、海域を30年間占用することができます。また、経済産業大臣から固定価格買取制度(FIT)や固定価格買取追加金制度(FIP)などの再生可能エネルギー支援制度を利用することができます。
公募占用制度の見直し
2021年12月から2022年3月にかけて、第1ラウンド公募として秋田県八峰町・能代市沖、秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖、千葉県銚子市沖の3区域で入札が行われました。しかし、この入札では、三菱商事エナジーソリューションズを中心としたコンソーシアムが3区域すべてを落札するという結果になりました。この結果は、洋上風力発電市場の多様性や競争性を損なうおそれがあるとして、多くの批判を受けました。
このような状況を受けて、政府は公募占用制度の見直しを行うこととしました。見直しの方向性は、2022年3月に発表されました。見直しの主なポイントは以下のとおりです。
・事業計画の迅速性を評価する仕組みを導入する。事業計画の迅速性とは、発電設備の整備開始時期や発電開始時期など、事業の進捗に関する指標です。事業計画の迅速性が高いほど、事業実現性の評価点が高くなります。
・総取り防止の仕組みを導入する。総取り防止とは、一つの事業者が複数の区域を落札することを防ぐための仕組みです。総取り防止の仕組みでは、一つの事業者が複数の区域に応募した場合、その事業者が最も高い評価点を得た区域以外では、その事業者の評価点を減点します。
・ゼロプレミアム水準を設定する。ゼロプレミアム水準とは、FIPによるプレミアム収入がゼロになる供給価格の水準です。供給価格がゼロプレミアム水準以下の場合は、供給価格の評価点を一律120点とします。ゼロプレミアム水準は、各区域に調達価格等算定委員会が算定します。
これらの見直しにより、政府は洋上風力発電事業の迅速な実施や市場の健全な発展を促進することを目指しています。
まとめ
洋上風力発電事業の入札方法である公募占用制度は、再エネ海域利用法に基づいて導入された制度です。この制度では、供給価格と事業実現性で事業者を評価し、最も適切な者に海域を占用させます。しかし、第1ラウンド公募では一つのコンソーシアムが3区域すべてを落札するという結果になりました。このため、政府は公募占用制度の見直しを行いました。見直しでは、事業計画の迅速性や総取り防止などの新たな仕組みが導入されました。これらの仕組みは、洋上風力発電事業の促進や市場の多様化に寄与することが期待されます。